きちんとした態度や正しい行いという意味です。『近思録』存養篇に述べられている言葉です。
動息節宣、以養生也。
動息節宣(ドウソクセッセン)は、以て生を養ふ也。
運動・休息・節制・発散は、生命を養う方法であり
飮食衣服、以養形也。
飲食衣服は、以て形を養ふ也。
飲食・衣服は肉体を養う材料であり
威儀行義、以養德也。
威儀行義は、以て徳を養ふ也。
きちんとした態度や正しい行いは、徳を養う道であり
推己及物、以養人也。
己を推して物に及ぼすは、以て人を養ふ也。
自分の気持ちで、相手の気持ちを察するのは、人を養う方法である。
『近思録』(キンシロク)は、朱熹(シュキ)と呂祖謙(リョソケン)が周濂渓(シュウレンケイ)、張横渠(チョウオウキョ)、程明道(テイメイドウ)、程伊川(テイイセン)の著作から編纂した、朱子学の入門書です。
4人は北宋時代の学者で、宋学を始めた人物とされています。
内容は、14章に分かれています。1176年に刊行されました。
表題の「近思」は論語の子張篇にある、次の文章から取られたものです。
「博く学んで篤く志し、切に問い近く思う」
広く学んで(ここぞというところで)集中的に考え、切実な問題意識をもって身近なことから考えてゆく。(仁徳はこの中から生まれてくる。)
日本では江戸時代後期に各地の儒学塾で講義されました。