【錦上(キンジョウ)花を添(そ)う】と訓読みされまして、美しいもの、素晴らしいものの上にさらに美しいものを加えるという意味です。
王安石の七言律詩にある言葉です。
河流南苑岸西斜 河は南苑を流れ岸は西に斜めなり
河は南の苑を流れ、岸は西に傾斜している。
風有晶光露有華 風に晶光(ショウコウ)有り露に華有り
風はきらきらと光り、露は花のようである。
門柳故人陶令宅 門柳(モンリュウ)は故人陶令が宅
門の前に柳の木、友人の陶知事の住居
井桐前日總持家 井桐(セイドウ)は前日(ゼンジツ)総持が家
井戸のそばの桐の木、以前、清浄な家である。
嘉招欲覆盃中淥 嘉招(カショウ)覆(かさ)ねんと欲す盃中の淥(ロク)
よき招きに、何度も盃を傾けたいと思う。
麗唱仍添錦上花 麗唱(レイショウ)仍(よ)って錦上花を添う
みごとな歌のもてなしに、錦上に花を添えたようなすばらしさだ。
便作武陵樽俎客 便(すなわ)ち武陵樽俎(ソンソ)の客となる
私はあの武陵の桃源に遊んだ漁師のよう、
川源應未少紅霞 川源(センゲン)応(まさ)に未だ紅霞(コウカ)を少(か)かざるべし
川の源の空はまだ夕焼けだ、急いで帰ることはない
王安石といえば、
万緑(バンリョク)叢中(ソウチュウ)紅一点、人を動かす春色は多くを須(もち)いず。
の『石榴の詩』で有名ですが、王安石の作ではない、という説もあるそうです。