良い悪いは別として、なんでもハイハイと人の言うことに従う様子を表している四字熟語です。
中国戦国時代末期の法家である韓非(B.C.280~B.C.233 )の著書『韓非子』にでています。
著者の韓非は、姓が「韓」で名は「非」です。「韓」という国の公子として生まれたのですが分家でしたし、言葉の不自由な口吃(コウキツ)でした。 そんなこともありまして韓非は文筆に冴えを見せ法家の集大成として二十巻・五十五篇・十余万言からなる『韓非子』を世に送ることになりました。
五十五篇、全部が全部、韓非の作ではないようですが、「孤憤(コフン)篇」「五蠹(ゴト)篇」は始皇帝を特に感激させ、韓非に会えたら死んでもイイとまで、言わしめた著作だそうです。
【唯唯諾諾】は、八つの姦(悪事)とそれを防ぐ方法について述べている「八姦篇」と名付けられたところに出ています。「姦(悪事)」は、臣下(家来)が君主の権力を侵害するという悪事を言ってます。
① 同牀(ドウショウ) :君主と添い寝をする女性を利用する悪事。
② 在旁(ザイボウ) :君主の側近を利用する悪事。
③ 父兄(フケイ) :肉親・重臣を利用する悪事。
④ 養殃(ヨウオウ) :君主のわざわいを助長させる悪事。
⑤ 民萌(ミンボウ) :民衆の機嫌とりを利用する悪事。
⑥ 流行(リュウコウ) :巧みな弁舌を利用する悪事。
⑦ 威強(イキョウ) :威勢を利用する悪事。
⑧ 四方(シホウ) :四方の隣国を利用する悪事。
これらが八つの姦(悪事)です。
② 在旁(ザイボウ)の説明のところで【唯唯諾諾】が登場します。
優笑(ユウショウ)・侏儒(シュジュ)・左右近習、此れ人主(ジンシュ)未だ命ぜらるも唯唯たり、未だ使わざるも諾諾たり、意に先んじて旨(むね)を承(う)け、貌(かたち)を観(み)、色を察して、以て主の心に
先立つ者なり。
側近は命令も受けないうちから「はいはい(唯唯)」と答え、「へいへい(諾諾)」と従い、
主君の顔色を見るのが得意な連中である。この連中を利用して悪事を働くのを「在旁」という。
この対策は側近を実際に働かせて必ず言葉通りに行うことを求め、余計なことは言わせない。
これが在旁の対策である。
韓非の結論です。