原文は【王顧左右而言他】となっていまして、【王、左右を顧(かえり)みて他(よそごと)を言えり】と訓読みされます。
はっきりとしたことを言わず、その場をごまかすことを表します。
出典は『孟子』梁惠王章句下です。長い文章ですが、最後の方 面白いですよ。
すっとぼけた感じで。
孟子謂齊宣王曰、
孟子 齊の宣王に謂(かた)りて曰く、
孟子が齊の宣王に向かっていいました。
王之臣有託其妻子於其友而之楚遊者、
王の臣、其の妻子を其の友に託し、楚に之(ゆ)きて遊ぶ者有らんに
王様のご家来の中に、遠く楚の国にゆくので、
『留守中なにぶんよろしく頼む』といって、
自分の妻子の世話を(十分にお金を添えて)友達に頼んでいった者があるとします。
比其反也、則凍餒其妻子則如之何、
其の反(かえ)るに比(およ)びて、
則ち其の妻子を凍餒(トウタイ)せしむれば、則ち如之何(いかに)すべき、
ところが帰ってきて見れば、その妻子を飢えて凍えさせていたとします、
王はこの家来をどうなさいますか。
王曰、棄之、
王曰く、之を棄(す)てん。
王は言われた、そんな者は見棄てる。
曰士師不能治士、則如之何、
曰く 士師(シシ)、士を治むること能(あた)わずんば、則ち如之何(いかに)すべき。
士師(裁判長官)が無能で、部下の士(やくにん)を取り締まれず、
刑罰が乱れたとしたら、どうなさいます。
王曰、已之、
王曰く、之を已(や)めん。
そのような者は、やめさせてしまう。
曰、四境之内不治、則如之何、
曰く、四境(シキョウ)の内(うち)治(おさ)まらずんば、則ち如之何(いかに)すべき。
孟子はここぞとばかりに言いました。
では、一国の君主として、国内が良く治まらないときには、どうなさいます。
王顧左右而言他。
王、左右を顧(かえり)みて他(よそごと)を言えり。
宣王はハタと返事に困り(聞こえないふりをして)左右の側近のほうを向いて、
別の話をして、ごまかしてしまわれました。