樗(おうち)も櫟(くぬぎ)も散木(役に立たない木)である、ということから、役に立たない人や物の喩を言います。自分のことを謙遜していうときにも使われるようです。
【樗】は、日本名で「おうち」、中国では「にわうるし」、「臭椿:シュウチン」を指すようです。材木として
役に立たないと見られていたようです。
【櫟】は、ブナ科の落葉高木で大昔は、【樗】と同様に役に立たない木と思われていたようです。
【散木】は、役に立たない木の意味です。【散】に、むだ、役に立たない の意味があります。
出典は、『荘子:ソウジ』逍遥遊(ショウヨウユウ)篇・人間世(ジンカンセイ)篇です。
逍遥遊篇に【樗】の話が出ています。
恵子(ケイシ)が荘子(ソウシ)に言いました、
私のところに大木があって、人々はそれを【樗:チョ。おうち】と呼んでいますが、その幹は
こぶだらけで直線は引けず、その小枝は曲がりくねっていてコンパスや定規は使えないということで、
道端に立てておいても大工は振り返りもしません。
ところで、あなたの話も大きすぎて用いようがないから、みんなにそっぽを向かれるのですね。
人間世篇に【櫟】、【散木】の話がでています。
大工の棟梁の石(セキ)がある町へ行った時の話です。
社(その土地の守り神)の神木の【櫟:レキ。くぬぎ】を観ました。
その大きさは数千頭の牛を蔽(おお)いかくすほどで、幹の太さは百かかえもあり、
その高さは山を見下ろすほどです。
一人の弟子が、未だ嘗(かっ)て、これほどの立派な材木を見たことがありません。
それなのに先生は、肯(あ)えて観(み)ずに、歩くことを輟(や)められないのは何故ですか。
棟梁の石は言いました。あれは【散木:役に立たない木】だ。
舟を作れば沈み、棺桶を作れば速く腐り、器を作れば速くこわれる、門戸を作ればヤニが流れ出し
柱を作れば、蠹(むしくい)がある。
全く使いようがないからこそ、あんな大木になるまで長生きができたのだ。