太液池の芙蓉の花という意味から、美しい女性の顔を譬えた四字熟語です。
出典は白居易の『長恨歌:チョウゴンカ』です。七言×120句の長い詩です。
楊貴妃が命を絶たれた、馬嵬(バカイ)の地から20キロほど離れた県に白居易は赴任しました。赴任してきたのは806年、ちょうど50年後でした。その年の12月『長恨歌』が作られました。
【太液芙蓉】は120句の後半で安史の乱が治まって宮廷に戻ってからの詩の58句目にでています。
楊貴妃はもちろんあの世の人です。
57 帰来池苑皆依旧 帰り来たれば池苑(チエン)皆旧に依(よ)る
帰ってみれば池も園も、もとのまま
58 太液芙蓉未央柳 太液(タイエキ)の芙蓉(フヨウ)未央(ビオウ)の柳
太液池のハスの花、未央宮の柳も、もとのまま
59 芙蓉如面柳如眉 芙蓉は面のごとく柳は眉のごとし
ハスは亡き人の面影、柳は亡き人の眉
60 対此如何不涙垂 此に対して如何(いかん)ぞ涙の垂れざらん
これを見るにつけても、ただ涙
61 春風桃李花開夜 春風(シュンプウ)桃李(トウリ)花開く夜
春の風に桃李の花咲く夜
62 秋雨梧桐葉落時 秋雨(シュウフウ)梧桐(ゴドウ)葉落つる時
秋の雨に梧桐の葉が落ちる時