泥沼にはまり、炭火で焼かれるような、とんでもない苦しみをさせられている人々、と言う意味です。
【塗】は、「土+涂(ト:みち・ぬ・る)」からできた形声文字です。「涂」は「塗」のもとの字です。
「塗」の意味は「どろ」、「ぬ・る」、「まみ・れる」、「みち」です。
【炭】は、「山+厂+火」からできた会意文字です。山の厂(崖:がけ)の下で炭を焼く意味です。
【塗炭之民】は『書経』の仲虺之誥(チュウキのコウ)篇に、【民(たみ)塗炭に墜(お)つ】というかたちで、でています。
夏(カ:B.C.2070年頃~B.C.1600年頃)の桀(ケツ)王の悪政に人民が苦しい思いをさせられていました。それを救うべく立ち上がったのが殷の湯(トウ)王です。
有夏昏德、民墜塗炭。
夏の徳に昏(くら)きこと有りて、民(たみ)塗炭に墜(お)つ。
夏(も桀になると)徳がなくなり、人民は酷(ひど)い苦しみに陥りました。
天乃錫王勇智、表正萬邦、
天すなわち王に勇智を錫(たま)い、万邦(バンポウ)に表正し、
天が王(殷の始祖湯王)に勇気と知恵をさずけ、天下の正しい手本として、
纘禹舊服
禹の旧服を纘(つ)がしむ。
かっての夏の禹王の徳を継がさせました。