酒や女色にのめり込んでしまうことを言います。
【沈】は、しずむ。深入りする意味です。
【湎】は、おぼれる。物事(酒色など)に心を奪われて他をかえりみないことです。
【冒】は、おかす、むさぼるの意味があります。
【色】に、男女の情欲を表す意味があります。
長恨歌にあります、『漢皇色を重んじ傾国を思う』、の【色】がそれです。
『學問のすすめ』第十編に【沈湎冒色】を戒める話が出ています。
これを譬えば、ここに沈湎冒色、放蕩無頼(ホウトウブライ)の子弟あらん。これを御するの法
如何(いかん)すべきや。
これを導きて人となさんとするには、先ずその飲酒を禁じ遊冶(ユウヤ)を制し、然る後に相当の
業に就かしむることなるべし。
その飲酒遊冶を禁ぜざるの間は、未だ共に家業の事を語るべからず。されども人にして酒色に
耽(ふけ)らざればとて、これをその人の徳義と言うべからず。
ただ世の害をなさざるのみにて、未だ無用の長物たるの名は免(まぬ)かれ難し。その飲酒遊冶を
禁じたる上、また随って業に就き身を養い家に益することありて、始めて十人並の少年と言うべきなり。
自食の論もまたかくの如し。