【自ら多識を矜(ほこ)る】と訓読みされまして、自ら物知りであることを自慢することをいいます。
佐藤一斎先生の『言志耋録:ゲンシテツロク』177条に出ている言葉です。
自矜多識、浅露人也。
自(みずか)ら多識に矜(ほこ)るは浅露(センロ)の人なり。
自分が物知りであることを自慢するのは、浅はかな人である。
自過謙遜、足恭人也。
自ら謙遜に過ぐるは、足恭(スウキョウ)の人なり。
また自ら謙(へりくだ)り過ぎるのは、媚(こ)び諂(へつら)う人と言える。
但其不自欺者、君子人也。
但(た)だ其の自ら欺(あざむ)かざる者は、君子人なり。
ただ、ありのまま自ら欺かない人が君子といわれる立派な人である。
誠之者也。
之れを誠にする者なり。
こういう人こそ誠の道を実行するひとであるのだ。
「足恭」は、諸説ありますが、「スウキョウ」と読んで「度のすぎた丁寧さ」の意味としました。
『論語』公冶長に、「足恭」が出ています。
巧言(コウゲン)・令色(レイショク)・足恭(スウキョウ)、左丘明(サキュウメイ:人名)之を恥ず。
お世辞・つくり笑い・度のすぎた丁寧さなど、左丘明は之を恥じた。