実際とかけ離れた、よりどころの無い理論、と実行できない議論を言います。
ほぼ同意の熟語を重ねて意味を強めた四字熟語です。
【空】は、穴+工(音符号) から作られた形声文字です。
意味は、原義から派生義の順に、①あな、②から、③むなしい、④そら となります。
【理】は、王(玉)+里(音符号) から作られた形声文字です。
意味は、原義から派生義の順に、①すじ、②ことわり、③わけ、④おさめる、⑤ただす、です。
【論】は、言+侖(音符号) から作られた形声文字です。
意味は、原義から派生義の順に、①あげつらう、②とく(解)、③さだめる、④かんがえ、です。
中国古典に例文が見られませんでした。中島敦『弟子』に【空理空論】がでていました。
許(キョ)からから葉(ショウ)へと出る途(みち)すがら、子路が独り孔子の一行に遅れて
畑中の路を歩いて行くと、蓧(あじか)を荷(にの)うた一人の老人に会った。
子路が気軽に会釈して、夫子を見ざりしや、と問う。老人は立止って、
「夫子夫子と言ったとて、どれが一体汝のいう夫子やら俺に分る訳がないではないか」と
突堅貪(つっけんどん)に答え、子路の人態(ニンテイ)をじろりと眺めてから、
「見受けたところ、四体を労せず実事に従わず【空理空論】に日を暮らしている人らしいな。」と
蔑むように笑う。
それから傍の畑に入りこちらを見返りもせずにせっせと草を取り始めた。
隠者の一人に違いないと子路は思って一揖(イチユウ)し、道に立って次の言葉を待った。
老人は黙って一仕事してから道に出て来、子路を伴って己が家に導いた。