【直(チョク)を以(もっ)て怨(うらみ)みに報(むく)ゆ】と訓読みされまして、公平無私を以って、
怨みに報いる、という意味です。
『論語』憲問篇で、ある人が孔子に、『恩恵(を施すこと)によって、怨み(を受けた相手)に報いる、
というのはどうでしょうか』 と尋ねました。それに対する孔子の答えが次のようです
或るひと曰わく、
ある人が言いました、
徳を以て怨みに報いば何如。
恩恵(を施すこと)によって、怨み(を受けた相手)に報いる、というのはどうでしょうか。
子日わく、
孔子が言いました、
何を以てか徳に報いん。
(それでは相手から受けた)恩恵に対しては何によって報いるのですか。
直きを以て怨みに報い、徳を以て徳に報いん。
公平無私な態度を以て怨みに報い、恩恵を以て恩恵に報いるべきです。
佐藤一斎先生は、さらに強く 『怨みに対して、怨みで報いてはダメだ』と言ってます。
直を以て怨に報ゆ、とは、
(論語にある)公平無私な態度を以て怨みに報いるということは
善く看ることを要す。
よく吟味する必要がある
只だ是れ直を以て之に待つ。
ただこのことは公平無私をもってこれに当たるのであって、
相讎(ソウシユウ)せざるのみ。
怨みに対して怨みをもって報いるように、互いに仇するものではないだけのことだ。
『言志後録』第42條に記載があります。