凄まじいくらい冷たい風と、人を苦しめる長雨のことを言います。
人を悲しませたり、傷つけたりすることの喩にも使われます。
『春秋左氏伝』昭公四年のところに、「氷」の貯蔵と分配に絡めて、
大袈裟に言えば国民統治の根本の一つ、時宜に応じた施政を言ってます。
夫冰以風壮、而以風出。
夫(そ)れ、冰(こおり)は風を以て壮(さか)んに、風を以て出(い)だす。
いったい、氷は冬の寒風に吹かれて堅くなり、春風の吹くときに取り出します。
其藏之也周、其用之也徧、
其の之を蔵(おさ)むるや周に、其の之を用いるや徧(ヘン)ならば、
貯蔵は厳密であり、これを使用する場合にはあまねく人に分け与えるならば、
則冬無愆陽、夏無伏陰、
則(すなは)ち冬に愆陽(ケンヨウ)無く、夏に伏陰(フクイン)無く、
すなはち、冬に陽気が狂うことなく、夏には陰気が潜伏することもなく、
春無凄風、秋無苦雨、
春に凄風(セイフウ)無く、秋に苦雨(クウ)無く、
春には寒い風が吹かず、秋には長雨が降らず、
雷出不震、無菑霜雹、
雷(ライ)出(い)でて震(シン)せず、菑(わざわい)する霜雹(ソウハク)無く、
雷が鳴っても落ちることなく、災害を起こす霜や雹もなく、
癘疾不降、民不夭札。
癘疾(レイシツ)降(くだ)らず、民(たみ)夭札(ヨウサツ)せず。
悪い病気も流行せず、民は若死にしたり流行病で大勢死ぬということもない。