【口、多忙を説(と)く】と訓読みされまして、口ぐせのように、「いそがしい、いそがしい」ということです。
佐藤一斎先生「言志録」第31条に記載があります
今人率口説多忙。
今人(コンジン)率(おおむ)ね口に多忙を説く。
今時の人は、口ぐせのように忙しいという(忙しくて、本も読んでいられないという)。
視其所為、整頓実事十一二。
其の為す所を視るに、実事を整頓するもの十に一二。
しかし、そのしているところを見ると、まともな仕事は十の中の一、二に過ぎない。
料理閑事、十八九、又認閑事、以為実事。
閑事(カンジ)を料理するもの十に八九、又閑事を認めて以て実事と為す。
つまらない仕事が、十の八、九である。
そして、このつまらない仕事を、(自分にとって)必要な仕事と思っているのであるから、
宜其多忙。
宜(うべ)なり其の多忙なるや。
これではいそがしいのももっともだ。
有志者勿誤踏此窠。
志有る者誤って此(この)窠(カ)を踏むこと勿(なか)れ。
本当に何かしようとする志のある者は、こんな穴に入りこんではいけない。