【羽翼、已(すで)に成る】と訓読みされまして、しっかりとした人たちが已に補佐していて、体制がしっかりとできあがっていることをいいます。
【羽翼】は、鳥の羽ことです。鳥の羽のように左右から助けること。補佐することです。
『史記』留侯(リュウコウ)世家にある四字熟語です。
原文は【羽翮已就:ウカクイシュウ】となっています。【翮:カク】は、羽の軸、羽の根元のことです。
漢の高祖 劉邦(リュウホウ)は、正妻 呂后(リョコウ)の子をすでに太子にしてましたが、
気が変わって側室 戚(セキ)夫人の子を跡継ぎにしたくなりました。
酒宴を開いたとき、太子には四人の賢臣がしっかりと補佐して、体制ができあがっていました。
戚(セキ)夫人に言いました、
わしは太子を替えようと望んだが、あの四人が太子を輔けている。
羽や翼ができあがってしまって、もはやどうすることもできない。
戚夫人は泣きました。劉邦は言いました
わしのために楚の舞を舞ってくれ、わしはそなたのために楚の歌をうたおう。
そうして歌いました。
鴻鵠高飛、一擧千里。
鴻鵠(コウコク) 高く飛ぶ、一擧千里。
コウコクが高く飛んだ、一擧に千里。
羽翮已就、橫絶四海。
羽翮(ウカク) 已(すで)に就(な)り、四海を横絶す。
羽翼すでになって、四海をわたる。
橫絶四海、當可奈何。
四海を横絶す、當(まさ)に奈何(いかん)す可(べ)き。
四海を飛び渡る、まさに如何(いかん)すべき
雖有矰繳、尚安所施。
矰繳(ソウシャク)有りと雖(いへど)も、尚(な)ほ安(いづく)にか施(ほどこ)す所あらん。
いぐるみ(繳:シャク)の弓矢(矰:ソウ)はあれども、なお何処(いづく)にか施さん。