乱れ離れて、粉々になる状態を表した言葉です。滅茶苦茶になる様子です。
「乱離」は「羅利」とも書きますし、「骨灰」は「粉灰」「骨敗」とも書きます。
【乱離】は国が乱れて人々が散り散りになることである、という説もあります。
また【ラリ】は、麻薬などの使用で言葉が支離滅裂になる状態を「ラリる」と言うようですが
その言葉の語幹「ラリ」と関係する、という説もあります。
芥川龍之介の短編小説に「きりしとほろ上人伝」があります。その中に【乱離骨灰】がでています。
遠い昔、「シリア」の国の山中に、「レプロボス」という名の心優しい大男が住んでいました。
世界で一番強いものに仕えたいと思い、帝や、悪魔に仕えますが、最後は隠者に洗礼を施され
「キリシトホロ」と名を改め、大河の渡し守となりました。
というような内容の小説です。【乱離骨灰】が出ている部分を記載しました。
さるほどに「レプロボス」は両軍の唯中に立ちはだかると、その大薙刀をさしかざいて、
遙(はるか)に敵勢を招きながら、雷(いかづち)のやうな声で呼(よば)はつたは、
「遠からんものは音にも聞け、近くばよつて目にも見よ。これは『アンチオキヤ』の帝が陣中に、
さるものありと知られたる『レプロボス』と申す剛の者ぢや。辱(かたじけな)くも今日は先手の
大将を承り、ここに軍を出(いだ)いたれば、われと思はうずるものどもは、近う寄つて勝負せよやつ」
と申した。
・・・・・・・・・・・・・・・・途中省略します・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
美々しいものの具に三尺の太刀をぬきかざいて、竜馬(リュウメ)に泡を食(は)ませながら、
これも大音に名乗りを上げて、まつしぐらに「レプロボス」へ打つてかかつた。なれども
こなたはものともせいで、大薙刀をとりのべながら、二太刀三太刀あしらうたが、やがて
得物をからりと捨てて、猿臂(エンビ)をのばいたと見るほどに、早くも敵の大将を
鞍壺(くらつぼ)からひきぬいて、目もはるかな大空へ、礫の如く投げ飛ばいた。
その敵の大将がきりきりと宙に舞ひながら、味方の陣中へどうと落ちて、
【乱離骨灰】になつたのと、「アンチオキヤ」の同勢が鯨波(とき)の声を轟かいて、帝の
御輦(ギョレン)を中にとりこめ、雪崩(なだれ)の如く攻めかかつたのとが、
間に髪をも入れまじい、殆ど同時の働きぢや。