【慈母(ジボ)に敗子(ハイシ)あり】と訓読みされまして、
慈愛にあふれ、むしろ甘やかしとみられかねない育て方をすると、子どもは放蕩な子になってしまう、
という意味です。
「慈母」は、慈愛に満ちた母の意味ですが、この四字熟語の中では度を過ぎて甘い母のことを暗示してます。
「敗子」は、家をやぶる男子の意で、道楽むすこ、やくざな不孝者の意味です。
出典は『韓非子』顕学(ケンガク)篇です。
敵国の君主が、我が国のやり方に服従していても、こちらから入貢させて臣下とすることはないが、
配下の諸侯はたとえ、我が国のやり方を非難していても、必ず貢物をもって入貢させることができる。
つまり力が強ければ、相手が入貢し、弱ければこちらから入貢せねばならぬ。
だから賢明な君主は力を養うことに務めるのだ。
夫嚴家無悍虜
夫れ嚴家(ゲンカ)に悍虜(カンリョ)無くして
そもそも家が厳格であれば怠ける使用人はおらず、
而慈母有敗子。
慈母に敗子有り。
母親が優しすぎれば子は親不孝者になる。
吾以此知威勢之可以禁暴
吾れ此れを以て、威勢の暴を禁ずべくして
私はそのことによって、厳しい威勢こそが暴力を禁じられるもので、
而德厚之不足以止亂也
德厚(トクコウ)の乱を止むるに足らざることを知るなり。
温かい德の恵みでは暴力を止められないということを知るのである。
秦の李斯(リシ)が二世皇帝故亥(コガイ)に厳しい政治をするように説いたときに、この「慈母敗子」を例に引いています。『史記』李斯伝。