【雲のごとく蒸し龍のごとく変ず】と訓読みされまして、英雄や豪傑が時運に乗じて活躍することを言います。天に昇る龍は雲を巻き上げ、変幻自在に活動して勢いを増すことを表します。
【龍】を「リュウ」と読むのは呉音読みで、「リョウ」と読むのは漢音読みです。
【雲蒸龍変】は、『史記』魏豹(ギヒョウ)・彭越(ホウエツ)伝で司馬遷のコメントにあたる、太子公曰く のなかで記載されています。
太子公曰く
魏豹・彭越は卑しい身分の出身ではあったが、千里の地を席巻し、敵を殺して勝ちに乗じ、その
名声は日ごとに高まった。
ところが、叛逆の意をいだいて敗れると、自決せずに虜囚の身となり、刑戮をこうむったが、
これはなぜであろうか。
得攝尺寸之柄、
尺寸(セキスン)の柄(ヘイ)を攝(も)つを得(え)ば、
わずかでも権力を握ることができれば、
其雲蒸龍變、
其の雲のごとく蒸し龍のごとく變じ、
機会を見て雲のごとく立ち上がり、龍のごとく変化して、
欲有所會其度。
其の度(ド)に會ふ所有らんと欲す。
思いのままに活躍することを狙ったものである。
以故幽囚而不辭云。
故をもって幽囚(ユウシュウ)せられて辭(ジ)せざれしと云う。
このために捕虜となることも辞さなかったのである