物が勢いよく見事に成長する様子を表した四字熟語です。が中国古代史のなかでは、残念な場面で使われています。
【禾】は、稲です。【黍】は、キビです。
【油油】は、葉の光沢があってツヤツヤと勢いの良いさまを言います。
『史記』「宋世家」にでている四字熟語です。
秦の最後の王:紂王(チュウオウ)の親戚に箕子(キシ)という人がいました。論語の中で孔子に、
「殷に三仁有り」と言われた一人です。ほかの二人は、微子(ビシ)、比干(ヒカン)です。
秦が周に滅ぼされ、箕子は朝鮮に封じられました。実際にあったかどうかは不明と言われていますが
箕子朝鮮の祖と言われています。
其後箕子朝周、過故殷虚。
其の後、箕子、周に朝し、故の殷の虚を過ぐ。
その後、箕子は周に参朝し、もとの殷の城址を過ぎたとき、
感宮室毀壞、生禾黍、箕子傷之。
宮室毀壊し、禾黍を生ずるに感じ、箕子之を傷む。
宮室は荒廃して跡形もなく、稲や黍が生えているのに感慨を催し、
箕子は心を傷めた。
欲哭則不可。欲泣爲其近婦人。
哭せんと欲すれば則ち不可なり。泣かんと欲すれば其れ婦人に近しと為す
号泣すれば周への憚りがあり、泣こうとすれば女々しく感じられ、
乃作麥秀之詩以歌詠之。
乃ち麦秀(バクシュウ)の詩を作り、以て之を歌詠(カエイ)す。
そこで麦秀の詩を作り詠歌しました。
其詩曰、麥秀漸漸兮、禾黍油油。
其の詩に曰く、麦秀でて漸漸たり、禾黍油油たり。
その歌詞にいう。麦の穂のびて漸々たり、稲の葉光りて油油たり。
彼狡僮兮、不與我好兮。
彼の狡僮、我と好からず、と。
かの紂の小童(こわっぱ)めよ、われと相いれなかったがために・・・・・・、と。