横暴で道理にもとり、気ままにふるまい振る舞い人をにらみつけることを表します。
乱暴で残忍な人を表した言葉でもあります。
【暴】は、日と獸の死骸の形を組み合わせて作られた、会意文字です。
「バク」と読む時は ①さらす、②あらわす、③あばく の意味になり
「ボウ」と読む時は ①あらい、②あらす、③あばれる、④おかす、⑤度を過ごす、⑥よこしま、
⑦うつ、⑧にわかに の意味になります。
【戻】は、戸+犬 から作られた会意文字で、門の出入り口に犠牲の犬を埋めて、邪悪な靈の入ることを
拒否することを表した文字です。①もとる、②いたる、③さだめる、④むさぼる などの意味が
あります。「もどす」、「もどる」は国訓(コックン)といいまして日本での意味、読みとなります。
【暴戻】は、乱暴で道理に反すると言う意味になります。
【恣】は、心+次(シ。音符号)から作られた形声文字です。次は、人が口を開いてなげく形です。
心のままになげくことから、「気持ちのまま、ほしいまま」の意味になりました。
【睢】は、目+隹(キ。音符号)から作られた形声文字です。
①見上げる、②目を見張る、③にらみつける、③ほしいまま、の意味があります。
【恣睢】は、①ほしいままに行動し、他人をいかってにらみつける、②勝手気儘な行動をとる、の
意味があります。
『史記』伯夷・叔齊列伝を出典としています。
盜蹠日殺不辜、肝人之肉、
盜蹠(トウセキ)は日(ひび)に不辜(フコ)を殺し、人の肉を肝(カン)し、
盜蹠は毎日罪のない人を殺し、人の肉を料理して食い、
暴戻恣睢、聚党数千人、
暴戻恣睢、党数千人を聚(あつ)め、
道に背いたひどいことやわがまま勝手をし
横行天下、竟以寿終。
天下に横行するも、竟 (つひ)に寿(ジュ) を以て終はる。
子分数千人を集めて天下にわがもの顔をしていたが、それでいて却って天寿を全うした。
是遵何徳哉。
是れ何の徳に遵 えるや。
盜蹠が何の德行を守り行なったというのか。
此其尤大彰明較著者也。
此れ其の尤大(ユウダイ)彰明(ショウメイ)較著(コウチョ)なる者なり。
この二つは(もう一つは善人の伯夷(ハクイ)・叔齊(シュクセイ)が餓死したこと)、
善人が報いられず悪人が罰せられない例として大きくハッキリして分かり善いものである。
盜蹠(トウセキ)は伝説上の大泥棒です。
大泥棒でも天寿を全うしたのはどういう訳なのか。
また善人のほまれ高い、伯夷・叔齊が飢え死にしてしまうのは、どういう訳なのか。
司馬遷は、わが身をふりかえり、『天道是か非か』と天に問いかけを行ないました。