【君子は本(もと)を務(つと)む】と訓読みされまして、立派な人物は物事の根本の修養に努力する、と言う意味になります。
『論語』学而篇の第2章にでている言葉です。
「君子」を「立派な大人」と、私は訳します。
この第2章は言い回しが面倒くさい(と私は思っています)ので、いきなり口語訳(私訳ですが)を読んで頂いて結構だと思ってます。
有子曰、
有子曰く、
有子(孔子の弟子の有若:ユウジャク)が言いました
其爲人也、孝弟而好犯上者、鮮矣。
其の人と為りや、孝弟にして上を犯すを好む者は鮮(すく)なし。
その人柄が、父母に孝行で目上の人を敬うような性格であれば、
目上の人にたてつくような人は、滅多にいないものだ。
不好犯上而好作亂者、未之有也。
上を犯すを好まずして乱を作(な)すを好む者は未だ之れ有らざるなり。
目上の人にたてつくことが嫌いな性格なのに、
世の中を乱すことが好きだなどという者は、いままで聞いたことがない。
君子務本、本立而道生。
君子は本を務(つと)む、本立ちて道生ず。
立派な人物は、まず根本をしっかりと押さえるものである。
根本が確りしていれば、道(生きかた)は開けるものだ。
孝弟也者、其爲仁之本與。
孝弟なる者は、其れ仁を為すの本か。
父母に尽くし目上の人を敬うということが、
思いやりのある人づくりの基本と云って良いだろう、と。
この第2章に先立ちまして第1章があります。
学びて時に之を習う、亦説ばしからずや。で始まる章です。
第1章は、学ぶことの楽しさ、から説き起こしています。
第2章は、(それじゃ、)何のために学ぶのか。それは仁(人への思いやり)の世の中を実現するためで、その根本は、父母に尽くし目上の人を敬うということである。と私は理解しています。
孔子の教えの基本が、この第2章でありまして、「務本(ムホン)の學」とも言われています。