自分に関係のないことで他人に嫉妬することを言います。また、他人の恋愛を妬むことも表します。
【法界】は、①全宇宙。②仏法の本体。③仏の道・仏道。④仏教徒の社会・仏門 などの意味があります。ここでは ①の全宇宙、の意味なんですが、全宇宙なんて【直接自分に関係がない】という思いで使われました。
【悋気】は、やきもち。男女間の嫉妬を表す言葉です。
それで【法界悋気】は、自分に無関係のないことで他人に嫉妬すること、と言う意味になりました。
二葉亭四迷の『浮雲』に、でています。二度も出ています。
『浮雲』は。言文一致の文体で書かれた日本の近代小説の最初の作品です。
難読熟語、四字熟語がふんだんに使われています。
ですからルビだらけです。
【悪口雑言】【一刻千秋】【一生懸命】【一心不乱】【有頂天外】、等々ざっとみただけですが60句ほどありました。
「色だ、ナニ夫婦サ」と【法界悋気】の岡焼連(おかやきれん)が目引袖引(めひきそでじき) 取々に
評判するを漏聞(もれき)く毎に、昇は得々として機嫌顔、これ見よがしに母子の者を其処茲処
(そこここ)と植木屋を引廻わしながらも片時と黙してはいない。
人の傍聞(かたぎき)するにも関わらず例の無駄口をのべつに並べ立てた。
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しかのみならず……此処が肝賢要……他の課長の遺行(イコウ)を数て暗に盛徳を称揚する事も
折節はあるので、課長殿は「見所のある奴じゃ」と御意遊ばして御贔負に遊ばすが、同僚の者は
善く言わぬ。昇の考では皆【法界悋気】で善く言わぬ野田という。