山海の珍味を一丈四方もならべるような贅沢な食事のことです。
【食前】は、食事の席で、自分の目の前のことです。
【方丈】は、一丈四方のことで、丈は長さの単位。古代中国の春秋戦国時代は2.25メートルです。
『孟子』盡心(ジンシン)下のなかで、自分は【食前方丈】のような贅沢は決してしないと言ってます。
孟子は言いました、
権勢のある人に自分の意見を述べるときには、気後れせず相手を呑んでかかれ。
その人の堂々たる富貴の様子を眼中に置くな。御殿の高さが数十尺、垂木の小口(切り口)が
五、六尺あろうと、自分がもし高い地位についたとしても、決してそんな真似はすまい。
また、
山海の珍味を一丈四方もならべ、給仕の美女を数百人も侍(はべ)らせるようなことは、
自分がもし高い地位についたとしても、決してそんな真似はすまい。
また、
大いに宴会を催して酒を飲み楽しみ、車馬を走らせて狩りをし、
後ろに千台の車を従えるようなことは、
自分がもし高い地位についたとしても、決してそんな真似はすまい。
すなはち、彼ら尊貴な人達の誇りとするそれらのものは、
すべて自分の恥じて真似しようとは思わぬ事ばかりである。
自分の持っているものは、すべて古の聖王の定めた成法(おきて)である。
さればこそ、自分はなんで彼らをおそれて気後れなどしようや。