人の寿命は定まったものではない。
老いている人が必ず若い人より先に死ぬとは限らない。老いや若さとは無関係であることを言った四字熟語です。
仏教語で『觀心略要集:かんじんりゃくようしゅう』を出典とした言葉です。
世人の愚かなるや、老少不定の境に於いて、千秋万歳の執を成す。
愚かなことよ。いつ死ぬかも知れない世の中で、長生きしたいと執着するとは。
尾崎紅葉『多情多恨』
旦那殿は高鼾で寐(ね)てござる。実に老少不定だなあ、恁(こ)う酒などが出ていると、
細君が居ないとは思われない。俺でさえ然(そ)う思うのだから、鷲見が寂しがるのも無理は
ないか。
夏目漱石『こころ』
「しかしもしおれの方が先へ行くとするね。そうしたら御前どうする」
「どうするって・・・・」
奥さんは其所(そこ)で口籠った。先生の死に対する想像的な悲哀が、ちょっと奥さんの胸を
襲ったらしかった。けれども再び顔をあげた時は、もう気分を更(か)えていた。
「どうするって、仕方ないわ、ねえあなた。老少不定っていう位だから」
奥さんはことさらに私の方を見て笑談(じょうだん)らしくこういった。
永井荷風『腕くらべ』
左様そうです。老少不定人の命ほどわからないものはありません。