物事がうまくかみ合わないことの譬えです。
【円鑿】は、丸い穴のことです。【鑿】は、穴をあけると言う意味から、穴の意味にもなります。
【方枘】は、四角い枘という意味です。【枘】は、簡単に言いますと突起物です。
要するに、丸い穴に四角い棒を入れようとしても入らない、ということから
「うまくかみ合わないこと」を表すようになりました。
出典は『史記』孟子・荀卿(ジュンケイ)列伝です。
故武王以仁義伐紂而王
故に武王は仁義を以て紂を伐って王たれども
だから、(周の)武王は仁義によって紂を伐ち王となったが、
伯夷餓不食周粟
伯夷は餓えて周の粟(ゾク)を食(は)まず。
伯夷は、餓死しても周王朝の米・粟(ゾク)は食べず、
衛靈公問陳而孔子不答
衛の靈公(レイコウ)陳を問へども、孔子は答へず。
衛の靈公が(孔子に)戦陣の法を尋ねたが、孔子は拒んで答えず。
梁惠王謀欲攻趙
梁の惠王、趙を攻めんと欲するを謀り
梁の惠王が趙の國を攻めようと謀り、
孟軻稱大王去邠
孟軻は大王の邠(ヒン)を去りしを稱(ショウ)す
孟軻は(周の)大王が(夷狄を避けて)邠を離れた故事を引き合いに出した。
此豈有意阿世俗苟合而已哉
此れ豈(あ)に世俗に阿(おもね)り苟(いやし)くも合ふのみに意(こころ)有らんや
これらは、世俗に迎合し人のきげんをとるだけを目的としたであろうか。
持方枘欲内圓鑿、其能入乎
方枘を持して圓鑿に内(い)れんと欲す。其れ能く入らんや。
四角いほぞを手に持って丸い穴の中に入れようとしても入るものであろうか