【人の言葉に耳を傾け、みずからよく内省すること】を表した四字熟語です。
『史記』商君列伝第八に、秦孝公のとき、商鞅は強引に変法を断行した事により、多くの旧来の貴族から怨みを買っていました。商鞅の腹心であった趙良(伝不肖)は、宰相を辞し、他国に赴くことを勧める場面でのやり取りで【反聴内視】が使われました。
趙良が商君(商鞅)と会った時、商君が言いました。
「わたしがあなたに会えたのは、孟蘭皋(モウランコウ)の紹介によってである。今後わたしはご交誼を
得たいと思うが、よろしいだろうか」と。
趙良が答えた。
「わたしは敢(あ)えて望みません。孔子の言葉に、『賢人を君として推挙(すいきょ)する者は進み、
偶人を集めて、王となる者は退(しりぞ)く』とあります。わたしは愚人です。それ故ご下命は受けかね
ます。
それに、『その地位にふさわしくないのに、その地位にあることを位を貪(むさぼ)るといい、その名声の
いわれがないのに、その名を得ていることを名を貪(むさぼ)るという』とも聞いています。
私があなたのご意向に従った場合には、私が貪位、貪名の者になる心配があります。それゆえに敢(あ)え
てご下命をお断り致します。」と。
商君は、「あなたには私が秦を治めることを快く思われないのか。」と尋ねた。
趙良は答えた。
反聽之謂聰
反(かえ)りて聽くを之れ聰と謂ふ。
人の言葉に耳を傾けることを聰といい
內視之謂明
內に視るを之れ明と謂ふ。
みずからよく内省することを明といい、
自勝之謂彊
自ら勝つを之れ彊と謂ふ
自己にうち克つことを強といいます。
虞舜有言曰自卑也尚矣
虞舜(グシュン)、言へる有り、曰く、自ら卑(ひく)くすれば尚(たっと)し、と。
虞舜にも『自らへり下れば尊敬される。』と言う言葉があります。
君不若道虞舜之道。無為問仆矣。
君、虞舜の道に道(よ)るに若かず。仆に問ふを為す無かれ、と。
あなたは虞舜の道を踏み行なわれるのがよく、私にお尋ねになることはご無用です。