【天に喜び地に喜ぶ】と訓読みされまして、大喜びをすることです。
歓びのあまり、思わず踊りだしてしまうような、そんな喜びの気持ちです。
【歓天】は、天に向かって喜ぶ意味です。
【喜地】は、地に向かって喜ぶ意味です。
「よろこぶ」の漢字表記は沢山あります。
喜ぶ 貰って嬉しいよろこび。
歓ぶ 願いが叶った時のよろこび。
悦ぶ 心からわき上がるよろこび。悦に入る。
慶ぶ 祝賀の気持ちが強いよろこび。
【歓天喜地】が、夏目漱石 『吾輩は猫である』第四章に使われています。
「なるほど少し妙だね」と鈴木君はどこまでも調子を合せる。
「しかるについ両三日前に至って、美学研究の際ふとその理由を発見したので
多年の疑団(ギダン)は一度に氷解。漆桶(シッツウ)を抜くがごとく痛快なる
悟りを得て【歓天喜地】の至境に達したのさ」
あまり迷亭の言葉が仰山(ギョウサン)なので、さすが御上手者(おじょうずもの)の
鈴木君も、こりゃ手に合わないと云う顔付をする。主人はまた始まったなと云わぬばかりに、
象牙の箸で菓子皿の縁(ふち)をかんかん叩いて俯(う)つ向(む)いている。
迷亭だけは大得意で弁じつづける。
注:「漆桶を抜く」の意味は、邪見や妄執の状態を抜け出すことです。