春に花開く梅のことを言います。
【一枝之春】は江南(揚子江以南の温暖な地方)に住んでいた陸凱(リクガイ)が、北方に住んでいた范曄(ハンヨウ:『後漢書』の作者)に
「ここ江南には、なにも贈る物がないので、とりあえず梅の一枝とともに春をお届けします」と
一首を認めました。 味なことをやりますね。
贈范曄詩 「范曄に贈る」詩 私 訳
折花逢驛使 花を折って 駅使に逢い ひと枝折って 駅使に託す
寄與隴頭人 寄せ与う 隴頭(ろうとう)の人に 隴山(ロウザン)のふもとのあなたへ
江南無所有 江南 有る所無し 江南に良きもの無し
聊贈一枝春 聊(いささ)か贈る 一枝(いっし)の春 ただあるは「一枝の春」、いま贈らん。
梅の別名として「好文木(こうぶんぼく)」があります。中国晉の武帝が学問に励んでいる時は梅の花が開き、学問を怠ると花が開かなかったという故事に由来しています。
そのほかの別名として、
春告草(はるつげぐさ)、木の花(このはな)、初名草(はつなぐさ)、風見草(かざみぐさ)、
風待草(かぜまちぐさ)、匂草(においぐさ)
などがあります。
江戸時代以降、花見といえば「サクラの花」を見ることですが、昔、奈良時代以前に「花」といえば、ウメを指すことの方が多かったようです。ウメよりサクラがより愛好されはじめるのは、平安時代中頃からのことです。
「ウメ」の語源には諸説ありますが、ひとつは中国語の「梅」(マイあるいはメイ)が変化したという説です。当時の日本人は「ンメ」のように発音していたようで、これが「ムメ」のように表記され、さらに「ウメ」へと変化していったというものです。
梅を詠んだ、短歌、俳句
東風吹かば 匂ひおこせよ 梅の花 あるじなしとて 春な忘れそ 菅原道真
人はいさ 心も知らず 古里は 花ぞ昔の 香ににほひける 紀貫之
梅一輪 一輪ほどの あたたかさ 服部嵐雪
「水戸偕楽園」いまが見ごろだそうです。
2012・3・26 記