【高明の家は鬼(キ)其の室を瞰(うかが)う】と訓読みされまして、それを要約して四字熟語にしたものです。権勢のある家に災いを下そうと、邪鬼が覗き込んでいるという意味です。
【瞰】は、上から見下ろすと言う意味です。富み栄えているときにおごり高ぶっていると、ひとから妬まれて災いを受けることのたとえをいいます。
『文選』所収の揚雄「解嘲:カイチョウ」という文章の中にでています。
炎炎者滅、隆隆者絕。
炎炎(エンエン)たる者は滅び、隆隆(リュウリュウ)たる者は絕ゆ。
炎のように燃え盛る者も消滅するし、高々と群を抜く者も潰え去る。
觀雷觀火、為盈為實、天收其聲、地藏其熱。
雷を觀(み)火を觀れば、盈(エイ)と為(な)り實と為るも、
雷鳴を聞き、火の燃え盛るを目にして、充つるもの、実在のものと人は思うけれども、
天收其聲、地藏其熱。
天 其の聲を收(おさ)め、地 其の熱を藏(ゾウ)す。
天が雷の音を吸収し、地がその熱を吸収してしまえば、(すべて空虚となる)。
高明之家、鬼瞰其室。
高明の家、鬼 其の室を瞰(うかが)う。
尊貴の家は、鬼がその堂奧を窺っているという。
攫拏者亡、默默者存。
攫拏(カクダ)する者は亡び、默默たる者は存す。
むやみに求める者は亡び、心静かなる者は存する。
位極者高危、自守者身全。
位 極まる者は高くして危ふく、自ら守る者は身(み)全(まった)し。
位の極まった者は高さゆえに危険であり、位に自得する者は身を全うする。