死ぬことも生きることと同じ様に考えることを表した四字熟語です。
出典は『荘子』秋水篇です。
孔子が匡(キョウ)という地で、宋人に襲われた時の話です。
孔子が匡(キョウ)の土地を旅したとき、宋の国の人々に幾重にも取り囲まれた。しかし孔子は琴を弾き、
歌を唄っていた。そこで子路は部屋に入って「どうして先生はこの危険なときに楽しんでおいでですか」と
詰問した。
孔子は答えた、そばに寄れ。話して聞かせよう。
私が行き詰まりを避けようとしてきたのは久しいことだ。しかしそれを避けられないのは運命である。
万事順調に行く事を望んできたのも久しい事だ。しかしそれを避けられないのは時の巡り会わせである。
聖人の堯や舜の時代、天下で行き詰まった人はいなかった、人々の知恵が優れていたからではない。
暴君の桀や紂の時代、天下で思い通りになった人はいなかった、人々の知恵が劣っていたからではない。
時勢のあり方によって偶然にそうなったまでである。
水上で蛟(みずち・伝説の怪獣)や竜を恐れないのは漁師の勇気であり、
陸地で野牛や虎を恐れないのは狩人の勇気であり、
白刃交於前、視死若生者、烈士之勇也。
白刃前に交わるも、死を視ること生の若き者は、烈士の勇なり。
白刃が眼前で入り乱れても、死を生とひとしくみなして平然としているのは、烈士の勇気である。
知窮之有命、知通之有時、
窮の命あるを知り、通の時あるを知る、
人生が行き詰まるか思いとおりになるかは、運命や時の巡り会わせで左右される事をわきまえて、
臨大難而不懼者、聖人之勇也。
大難に臨みて懼(おそ)れざる者は、聖人の勇なり。
大きな困難に出会ってもくじけないのは、聖人の勇気である。
子路よ、落ち着きなさい。私の運命にも決まったところがあるのだよ。
それから幾日も経たないうちに、兵士たちの指揮官が挨拶にやってきてこう言った
あなたを陽虎(ヨウコ:魯の家臣で以前、匡の村で乱暴した事があったので、村人から怨まれていた)と
思ったので囲んだのですが、そうでないと分かりました。お詫びして引き上げます。