先が見えなく、前途に希望のないことのたとえをいいます。
【暗】は、日+音(音符号)から作られた形声文字です。
音符号としての【音】には、神意を問うたとき神からの応答が、夜暗い時に暗示されることから、
意味としては暗い時の音をあらわします。
【日】と組み合わされて、「やみ。くらい」を表すようになりました。
【澹】は、氵+詹(音符号)から作られた形声文字です。
意味は、①水のゆったり動くさま。②しずか、安らか。③さだまる。などがあります。
【暗澹】は、①暗くてはっきりしない。暗くて靜か。②前途に希望の無いようす。の意味です。
【溟】は、氵+冥(音符号)から作られた形声文字です。
意味は、①くらい。とくに、小雨が降って薄暗いようす。②大海。
【濛】は、氵+蒙(音符号)から作られた形声文字です。
意味は、①小雨が降るようす。②くらい。
【溟濛】は、小雨が降って薄暗いようすを表します。
夏目漱石の【吾輩は猫である】第九章に【暗憺溟濛】がでています。
彼の眼玉がかように晦渋溷濁(カイジュウコンダク)の悲境に彷徨(ホウコウ)しているのは、
とりも直さず彼の頭脳が不透不明(フトウフメイ)の実質から構成されていて、その作用が
【暗憺溟濛】の極に達しているから、自然とこれが形体の上にあらわれて、知らぬ母親に
いらぬ心配を掛けたんだろう。