【慇】も【懃】も、ていねい、てあつい、ねんごろの意味があります。【慇懃】は同じ意味の語を重ねて、「ていねい」を強調して、非常に丁寧で礼儀正しい様子を言います。
でも、言葉や態度などがあまりに丁寧過ぎると、逆に嫌味が感じられますし、誠意も感じられなくなります。
【慇懃無礼】の四字熟語が表す意味は、
表面上の態度は極めて礼儀正しく丁寧だが、実は尊大で相手を見下げている状態です。
東京電力が発行した『賠償金ご請求書受付のおしらせ』の葉書には
ご請求書種類 3回
ご請求番号 3回
代表請求者さま 2回
代表者さまご請求者さま番号 1回
ご請求者さま 2回
ご請求者さま番号 3回
の記載がありました。「番号」にまで敬語を使ってました。
【慇懃無礼】と同じような意味で【面従腹背】という四字熟語があります。お役人と言われている公務員を評した言葉です。
こういう言葉が大昔から有ると言うことは、こういうことが大昔からあったということです。
こういう言葉が無くなった時に、はじめて、こういうことがなくなったということになります。
【慇懃】という言葉が文字通り、大変懇(ねんご)ろであるという意味で
司馬遷が任少卿(ジンショウケイ)に宛てた書の中で
『 ・・・。意気は勤懇(キンコン:まごころを尽くす)にして慇懃たり・・・・・。』と記載していました。
また中唐の詩人楊巨源(ヨウキョゲン)の『接楊柳(セツヨウリュウ)』という七言絶句の3句目、4句目に
惟(た)だ春風の最も相惜しむ有り 春風がいかにも名残を惜しむかのように
慇懃に更に手中に向かって吹く 心をこめてあなたの手の中の柳にそよそよと吹いている。
とありました。
2012・3・22 記