池の中の魚と籠(かご)の中の鳥ということで、不自由な身の上のことを言います。
そこから宮仕えなどの自由にならない身の上のたとえに使われます。
【池魚籠鳥】の形でみられるのは、『文選』所収の藩岳(ハンガク)「秋興賦」です。
藩岳は自然の中で生きることを理想としていましたが、宮仕えに縛られて思うようにいかないことを賦に残しました。序文の中に【池魚籠鳥】が使われています。
攝官承乏 猥廁朝列
官を攝(かさ)ね乏(とぼ)しきを承(う)け、猥(みだ)りに朝列に廁(まじ)る
官位を頂戴しみだりに朝廷の役人に加わっている
夙興晏寢 匪遑厎寧
夙(つと)に興(お)き晏(おそ)く寢(い)ね、厎寧(テイネイ)に遑(いとま)あらず
朝早く起き夜遅く寝て、努めるも心安らかな時とて無い
譬猶池魚籠鳥 有江湖山藪之思
譬(たと)えば猶【池魚籠鳥】にして,江湖山藪(サンソウ)の思い有るがごとし
私の心境は、池の魚や籠の鳥が大きな湖や広い山野を懐かしむのと同じである
於是染翰操紙 慨然而賦
是(ここ)に於いて翰(ふで)を染め紙を操(と)り、慨然として賦す
そこで筆を濡らし、紙を手に取り慨嘆しつつ賦を作り上げた。
潘 岳(ハンガク:247年~300年)は、西晋時代の文人です。
陸機と並んで西晋時代を代表する文筆家で、友人の夏侯湛と「連璧」と称されるほど、たぐいまれな美貌の持ち主としても知られていました。
『世説新語』によると、潘岳が弾き弓を持って洛陽の道を歩くと、彼に出会った女性はみな手を取り合って彼を取り囲み、彼が車に乗って出かけると、女性達が果物を投げ入れ、帰る頃には車いっぱいになっていたというエピソードから生れた四字熟語が【擲果満車:テッカマンシャ】です。
今日の四字熟語 No. 87 【擲果満車】http://www.fukushima-net.com/sites/meigen/109