大きくて立派な家屋や建物のことを言います。
【大廈】は、大きな家屋。また屋根を四方にふき下ろした家を言うこともあります。
【高楼(樓)】は、高くて立派な家をいいます。【楼】の正字体は【樓】で、二階建ての建物を言います。
樋口一葉の小説『ゆく雲』の冒頭の文章に【大廈高楼】がでてきます。
酒折(さかおり)の宮、山梨の岡、鹽山(エンザン)、裂石(さけいし)、さし手の名も
都人(ここびと)の耳に聞きなれぬは、小佛(こぼとけ)さゝ子の難處を越して猿橋の
ながれに眩(めくる)めき、鶴瀬(つるせ)、駒飼(こまかひ)見るほどの里もなきに、
勝沼の町とても東京(ここ)にての場末ぞかし、
甲府は流石に【大厦高樓】、躑躅(つつじ)が崎の城跡など見る處のありとは言へど、
汽車の便りよき頃にならば知らず、こと更の馬車腕車(くるま)に一晝夜をゆられて、
いざ惠林寺(エリンジ)の櫻見にといふ人はあるまじ、
故郷(ふるさと)なればこそ年々の夏休みにも、人は箱根伊香保ともよふし立つる中を、
我れのみ一人あし曳の山の甲斐に峯のしら雲あとを消すこと左りとは是非もなけれど、
今歳この度みやこを離れて八王子に足をむける事これまでに覺えなき愁(つ)らさなり。
樋口 一葉は、明治5年から明治29年の24歳と6カ月を生きた小説家です。
生活に苦しみながら、亡くなる1年半で「たけくらべ」「にごりえ」「十三夜」といった秀作を制作発表しました。 樋口一葉の作家生活は14カ月あまりで、奇跡の1年半と言われてます。
肺結核で亡くなりました。