草木がよい香りを漂わせ、青々と生い茂っている様子を表した四字熟語です。
【郁郁】は、①文化の高いようす、②かんばしいさま、③奥深いようす、などの意味があります。
ここは②の「かんばしいさま」をいいます。
北宋の政治家で文人の范仲淹(ハンチュウエン:989年~1052年)に、科挙(カキョ)の同期で巴陵(ハリョウ)郡の太守滕子京(トウシケイ)がいました。その滕子京が岳陽楼を修復しまして、記念の文章を范仲淹に依頼しました。
それが『岳陽楼記:ガクヨウロウのキ』です。【郁郁青青】は、その中にでてきます。
【郁郁青青】がでているところを記載します。
春は和ぎ景明らかにして、波瀾(ハラン)驚かず、
おだやかな春の景色も明るく、洞庭湖の波もさわがず、
上下天光、一碧万頃(イッペキバンケイ)、沙鴎翔集(サオウショウシュウ)し、
天地に光みなぎり、青一色の水面が広々と続き、砂地にかもめが飛び交い、
錦鱗游泳(ギンリンユウエイ)し、岸芷汀蘭(ガンシテイラン)、
錦鱗の魚が泳ぎ回り、岸辺の芷(よろいぐさ)、水際の蘭が、
郁郁青青(イクイクセイセイ)として、或いは長煙一空(チョウエンイックウ)、
香を放って青々と伸び、あるいはまた、たなびくもやが空一面にかかり、
皓月千里(コウゲツセンリ)、浮光(フコウ)金を躍らし、
さえわたる月は千里を照らし、水に映る月は金色におどり、
静影(セイエイ)璧(たま)を沈め、漁歌互いに答ふるがごときは、
静かに水面に浮かぶ月影は璧を沈めたようにみえ、漁夫の歌声が互いに歌い合うとき、
此の楽(たのしみ)何ぞ極まらん。
その楽しさは尽き果てぬ。
この『岳陽楼記』は、楼上からの風景は見る人の境遇によって違いが出てくることを述べ、最後に民の父母たる君子のあるべき姿として、有名な【先憂後楽:センユウコウラク】で結んでいます。
後楽園の由来ともなっている【先憂後楽】は、天下の憂に先んじて憂い、天下の楽に後れて楽しむ、と言う意味です。