【迦陵頻伽:カリョウビンガ】は梵語の「カラヴィンカ」を音訳したものです。
上半身が美女で下半身が鳥の姿で、浄土曼陀羅(浄土の有様を描いたもの)の絵に描かれています。
極楽浄土に住むという想像上の鳥の名前です。
【迦陵頻伽】は、殻の中にいる時から鳴きだすといわれ、その声は非常に美しく、比類なき美しい歌声は仏の声に譬えられるほどだそうです。
仏典では、「逸音鳥」、「好声鳥」、「妙声鳥」、「妙音鳥」、とも意訳されます。
また、日本では美しい芸者や花魁(おいらん)、美声の芸妓を指してこの名で呼ぶこともあったそうです。
能『羽衣』に【迦陵頻伽】が謡われています。地謡(じうたい)のところです。
住み馴れし空にいつしかゆく雲のうらやましきけしきかな。
(帰れない)住み慣れた空を悠々と流れる雲が羨ましい。
迦陵頻迦のなれなれし。迦陵頻迦のなれなれし。聲今更に僅かなる。
天に住む鳥たちの声すらもう聞こえない。
雁がねの帰り行く。天路を聞けば懐かしや。
雁たちが帰ってゆく。どこへと聞けばなつかしい所の名が返ってくる。
千鳥かもめの沖つ波。ゆくか帰るか春風の空に吹くまでなつかしや、空に吹くまでなつかしや。
千鳥やかもめが飛び交う様子、春風が空に吹く様子を見ていると、天上世界が懐かしい。