【蟷螂(トウロウ)蟬(せみ)を窺(うかが)う】と訓読みされまして、自分の利益だけを考えて、さし迫った危険に気が付いていないことを表した四字熟語です。
『荘子』山木篇にでているお話です。岩波文庫『荘子/第3冊』外篇・雑篇の山木を転記します。
荘周は雕陵(チョウリョウ)という禁苑の垣の中に入って遊んだ。そのとき一羽の奇妙な
鵲(かささぎ)に似た鳥が南の方から飛んでくるのを認めた。翼の幅は七尺もあり、目の
大きさは直径一寸もあって、それが荘周の額を掠めて飛びすぎると栗林の中に止まった。
荘周はつぶやいた「これは何と言う鳥だろう。翼は大きいが飛び去ろうともせず、目は
大きいがものを見ようともしない」。着物のすそを巻くりあげて静かに歩み寄り、彈弓を
手に取るとそれを引き絞って射止めようとした。
ふと見ると,一匹の蟬がちょうど快い木陰に満足してわが身の事を忘れている。螳螂が葉陰に
潜んでこの蟬を捕えようとしているのだが、この螳螂も獲物だけを見てわが体のことを忘れている。
さきの奇妙な鵲が螳螂を狙ってものにしようとしているのだが、この鳥も利益だけを見て
その本来のあり方を忘れている。
荘周はぞっとして「ああ、もともと物はすべてたがいに害しあうものだ。そして利と害とは
互いに呼び合うのだ」と言うと、彈弓を投げ捨てて身をひるがえして逃げ出した。禁苑の番人
が怪しんで追いかけ、彼を厳しく詮議した。
昭和63年(1988年)6月4日、漫画家・手塚治虫らのよびかけで設立された「日本昆虫クラブ」が「6(む)4(し)」の語呂合わせで『虫の日』を記念日として提唱しました。
また、カブトムシで有名な田村市常葉(ときわ)町の田村市常葉振興公社が提唱する「ムシの日」でもあります。