【兵に常勢無し】と訓読みされまして、戦争には、こうすれば絶対に勝てるという決まった戦術はない。
常に敵情の変化に対応して戦わなければならない。
『孫子』虚実篇の一文です。
夫(そ)れ兵の形は水に象(かたど)る。
軍の形は水の形のようなものである。
水の形は、高きを避けて下(ひく)きに趨(おもむ)く。
水は高いところを避けて低いところへ流れていく。
兵の形は、実を避けて虚を撃つ。
軍の形も、敵が充実した備えをしているところは避けて、すきのあるところを攻撃する。
水は地に因りて流れを制し、兵は敵に因りて勝を制す。
水は地形に従って流れを定めるが、軍も敵情に従って変化しながら勝利を得る。
故兵無常勢、水無常形。
故に兵に常勢無く、水に常形無し。
軍には決まった勢いというものがなく、水には決まった形がない。
能因敵變化而取勝者、謂之神。
能(よ)く敵に因(よ)りて変化し、而(しか)して勝ちを取る者、之を神と謂ふ。
敵の態勢に応じて変化しながら勝利を勝ち取ってこそ絶妙な戦術と言える。
春秋時代、晉軍と楚、陳、蔡の連合軍が激突した「城濮(ジョウボク)の戦い:B.C.632年」がありました。
晉の文公は、楚の同盟国で後方支援的な立場で参戦した陳、蔡の軍を撃破して大勝利を収めました。
戦略的自衛権のもと後方支援として出かけた場合、
相手方からすれば敵軍であることに変わりはないはず。
真っ先に攻撃対象になることを歴史が教えてくれてます。