【管窺蠡測】は、【管を以って天を窺(うかが)い、蠡(レイ)を以って海を測(はか)る】を略して四字熟語にしたものです。
見識が非常に狭いことを譬えた言葉です。
【管窺】は、細い管を通して空を見ることです。
【蠡測】は、瓢箪で大きな海の水を測ることです。
『文選』所収の東方朔「客の難に答ふ」のなかにでてきます。
ある時、客人達が、東方朔を非難してこう言いました。
昔、蘇秦、張儀は卿相の位につきました。今、あなたは豊かな学問見識がありながら、
帝にお仕えすること数十年、しかしその位は侍郎に過ぎません。この理由は一体何でありましょうか。
東方朔が言いました
蘇秦、張儀の戦国乱世と、天下の安定している今の世は、比べるべくもない。
書物にありますが、天下に害惡がなければ、聖人であっても、その才能を発揮するところがない。
だからといって修養を怠ってよいと言うことではありません。
自分自身が怠らずに修養に励んでいれば、外見上の出世などは問題ではありません。
語曰
語(ゴ)に曰く
次のような言葉があります
以筦窺天、以蠡測海、以筳撞鐘。
筦を以って天を窺ひ、蠡を以って海を測り、筳(テイ)を以って鐘を撞く。
管でもって天を覗き、瓢箪で海の水を測り、小枝で大きな鐘を撞く。
豈能通其條貫、
豈(あに)能(よ)く其の條貫(ジョウカン)に通じ、
これでどうして天の条理を知ったり、
考其文理、發其音聲哉。
其の文理を考え、其の音聲を發せんやと。
海の様々な変化の様相を知り、鐘の妙なる音声を知ることが出来ましょうか。
客人達の時代を見ない見識のなさを【管窺蠡測】の喩えを以って諭しました。