両者が争って、共倒れになってしまったところを、第三者が何の苦労もなく両者を手に入れてしまいました。
【漁夫の利】、【鷸蚌(イツボウ)の争】と同義の四字熟語です。
【犬】と【兎】の争いに変わりました。【漁夫】ではなく、【田父】、すなはち農夫となっています。
古代中国、戦国時代の話です。『戦国策』齊策のところにでています。
齊が魏を伐とうとした。その時、淳于髠(ジュンウコン)が、齊王(宣王:センオウ)に向かって言った、
『韓子盧(カンシロ)というのは、天下稀に見る足の速い犬、東郭逡(トウカクシュン)というのは、
天下稀に見るすばしこい兎です。
ところが、韓子盧(犬)が東郭逡(兎)を追いかけ、山の周囲を駆け巡ること三たび、山の頂きに
かけ登ること五たび、兎は前方で力尽き、犬は後方でくたくたになり、
犬兎俱罷、各死其處。
犬兎俱(とも)に罷(つか)れて、各々其の處(ところ)に死す
犬も兎もともに疲れ果てて、それぞれその場で死んでしまいました。
農夫がそれを見て、いささかの疲労倦怠もなく、獲物を独占したのです。
いま、齊と魏とが、久しく相対峙して、兵力をにぶらせ、民衆を疲れさせようとしておいでに
なりあますが、わたくしは、強力な秦や広大な楚が、齊や魏の疲労衰弱に付け込んで、かの農夫と
同様にぼろ儲けをするのではないかと、心配しております』と。
これを聞いた齊王は恐れて、将軍を解任し、兵を帰休させた。
齊も魏も「戦国の七雄」ですが、秦・楚には敵わなかったようです。
最終的には、秦が他の六国を滅ぼしてB.C.221年 中国を始めて統一しました。