ものごとに感じやすく、恨(うら)みに思うことの多いこと。
【多情】は、① 心に思うことが多い、情愛の深いこと。② 気持ちが移りやすいこと、うつりぎ、うわき。
【多恨】は、恨む気持ちが多いこと。
中国古典に【多情多恨】は見つかりませんでした。
夏目漱石『吾輩は猫である』に、
芸術家は本来【多情多恨】だから、泣いた事には同情するが、 ・・・・・。
の表現がありました。
【多情多恨】の言葉は、尾崎紅葉の小説『多情多恨』でよく知られるようになりました。
小説『多情多恨』は、明治29(1896年)「読売新聞」に連載になりました。
主人公鷲見(すみ)柳之介の亡妻へ寄せる思いを連綿と追い続ける心理の推移と、一方では親友の葉山誠哉の奥さんに親しんでいく心理も描かれています。言文一致体です。
【多情多恨】のあとの連載が【金色夜叉】です
因みに、【多情仏心】の四字熟語は里見弴(とん)の同名の小説で有名になりました。
異性に対して情の多いことではあるが、常に慈悲の心で接すると言う意味です。
結局薄情なまねは出来ないで、ずるずるッと深はまりをするようなところは、
どうも多情仏心の星ですよ。
主人公:藤代信之の「本気で女に惚れ,相手を本気にさせる」を信条とした、奔放な女性遍歴を描いた小説です。