天下に並ぶ者がないほどの、すぐれた人物のことを言います。
『史記・李将軍伝』に出ている四字熟語です。
前漢第5代文帝(B.C.180~BC157)の時代、匈奴(キョウド)の侵略に対し李広(リコウ:?~B.C.119)将軍は目覚ましい働きをしました。
第6代景帝の時、李広の活躍を憂慮して、異民族の降服者を管理する役であった公孫昆邪(コウソンコンヤ)が、帝に対して、
「李広の才気は天下無双であります。ところが、いま、自らその才能を恃(たの)んで、しばしば匈奴を敵として戦っております。これでは、おそらく李将軍を死なせてしまうでしょう」と、進言しました。
その進言の中で【天下無双】の言葉が使われました。
李広将軍は李陵(リリョウ:中島敦『李陵』のモデル)の祖父で匈奴から飛将軍とおそれられていました。将軍は清廉(セイレン)で、金品を賞賜(ショウシ)されると、そのたびに部下に分け与え、飲食物は士卒と同じ物をとっていました。
晩年、衛青(エイセイ:武帝の時の将軍)に従って匈奴討伐にむかいましたが、道に迷ったことで責任を問われ、怒りの内に自殺してしまいました。
【天下無双】の詩人・思想家・評論家 吉本隆明(よしもと・たかあき)さんが3月16日午前2時13分、肺炎のため東京都内の病院で死去しました。87歳でした。
2012・3・17記