白髪混じりのいま、若かりし頃の華やいでいた頃を思い出し、穏やかな余生を過ごしている心境をあらわした言葉です。
杜牧の『禪院に題す』という七言絶句のなかから採った言葉です。杜牧は晩年、糖尿病を患っていたそうです。
禅寺で療養していた49歳のときの詩です。
題禅院
觥船一棹百分空 觥船(コウセン)一棹(イットウ) 百分(ヒャクブン)空(むな)し
大杯の酒 一気に飲みほし、
十載青春不負公 十載の青春 公に負(そむ)かず
わが青春 悔いはなし
今日鬢糸禪榻畔 今日鬢糸(ビンシ) 禪榻(ゼントウ)の畔(ほとり)
白髪頭が腰かけて
茶烟輕颺落花風 茶煙軽(かろ)く颺(あが)る 落花の風
落花と上がる 茶の煙
觥船 形が舟のような觥(コウ:さかずき)
鬢糸 両頬の髪の毛に交じった白髪。
禪榻 坐禅用の腰掛け
輕颺 軽やかに舞いあがる。
茶烟 茶を沸かす煙。杜牧は療養中ですからお酒が飲めません。仕方なくお茶を
沸かします、その時の煙が【茶烟】です。
立春から88日目、八十八夜です
唄で知られる茶摘みの頃でもあります。
唱歌『茶摘み』
夏も近づく八十八夜
野にも山にも若葉が茂る
「あれに見えるは茶摘みぢやないか
あかねだすきに菅(すげ)の笠」
日和(ひより)つづきの今日このごろを
心のどかに摘みつつ歌ふ
「摘めよ摘め摘め摘まねばならぬ
摘まにゃ日本(にほん)の茶にならぬ」