花が散り、鳥が鳴く晩春の風情を四字熟語にまとめたものです。
孟浩然(モウコウネン)の春暁(シュンギョウ)を基にして作られました。
春眠不覺曉 春眠 暁を覚えず、
處處聞啼鳥 処処(ショショ)啼鳥(テイチョウ)を聞く、
夜來風雨聲 夜来 風雨の声(こえ)、
花落知多少 花落つること 知りぬ多少ぞ。
土岐(とき)善麿(ぜんまろ)の名訳です。
春あけぼののうすねむり
まくらにかよふ鳥の聲
風まじりなる夜べの雨
花ちりけんか庭もせに
夏目漱石の『草枕』第一章に【落花啼鳥】が出ています。
ただ降る雨の心苦しくて、踏む足の疲れたるを気に掛ける瞬間に、われはすでに詩中の人にもあらず、
画裡(ガリ)の人にもあらず。依然として市井(シセイ)の一豎子(ジュシ)に過ぎぬ。
雲煙飛動の趣(おもむき)も眼に入(い)らぬ。
【落花啼鳥】の情けも心に浮ばぬ。蕭々(しょうしょう)として独り春山を行く吾の、いかに美しきかは
なおさらに解せぬ。
参考までに『草枕』の冒頭は
山路(やまみち)を登りながら、こう考えた。
智に働けば角が立つ。情に棹させば流される。意地を通せば窮屈だ。
とかくに人の世は住みにくい。
です。