天は黒く、地は黄色である、と言う意味です、初出は『易経』坤の卦です。
夫玄黃者、天地之雜也。
それ玄黄は、天地の雑(まじわ)りなり。
玄黄というのは、天と地の色がまじりあうことです。
天玄而地黃。
天は玄にして地は黄なり。
天の色が玄(黒)で地の色が黄である。
中国六朝時代、周興嗣(シュウコウシ)が梁の皇帝である武帝の命を受けて、晋の王羲之(オウギシ)の筆跡を集め、重複しない1000の漢字を250の4字句に綴りました。
『千字文』と言いまして、文字を収得するための初級教科書として用いられていました。
250句の最初が【天地玄黄】です。
2句目 【宇宙洪荒(ウチュウコウコウ):宇宙は広い】、
3句目 【日月盈昃(ジツゲツエイショク):日月は傾き欠ける】
と続きまして、249句目、250句目は、
249句目 【謂語助者(イゴジョシャ):助辞は語を助ける】
250句目 【焉哉乎也(エンサイコヤ):焉、哉、乎、也なり、これにて終わる】。
です。
84句目に【夫唱婦隨(フショウフズイ)】がでています。
『古事記』によりますと応神天皇のときに『論語』と『千字文』が伝わった、となってますがこのときに、
『千字文』はまだ出来ていません。
歴史のミステリーとして江戸末期から話題にされていました。
はっきりした答はまだでていません。
『吾輩は猫である』第六章に【天地玄黄】がお医者さんの名前として、『千字文』と一緒に引用されています。
山盛りの水瓜(スイカ)をことごとく平らげて、御夏さんの返事を待っていると、返事の来ないうちに
腹が痛み出してね、うーんうーんと唸(うな)ったが少しも利目(ききめ)がないからまた御夏さんを
呼んで今度は静岡に医者はあるまいかと聞いたら、御夏さんがまた、なんぼ静岡だって医者くらいはあり
ますよと云って、【天地玄黄】とかいう『千字文』を盗んだような名前のドクトルを連れて来た。