心がひねくれて、ずるがしこく立ち回ること、またその人を表わす四字熟語です。
「奸」は「女」+「干」の形声文字で、「干」は盾または二またの武器を表し、そこから「おかす」の意味を
持ち、「奸」におかす、みだす、よこしまという意味が発生しました。
「佞」は一説に「女」+「仁」の形声文字で、「仁」は近づき親しむの意味があることから、「佞」は女性が
なれ親しむの意味が変化して、へつらう、おもねるの意味を表すようになりました。
「邪」は「牙」+「阝」の形声文字で本来、城壁が方形でない町を表す字として作られました。方形でないと
言うことから、歪んでいる→わるい→よこしま と言うふうに意味が変化していったようです。
「智」は「矢」+「干」+「口」の会意文字で、「矢」、「干」は神への誓約のときに使う聖器と兵器です。
「口」は祝詞を容れる器です。神に祈り、誓うことを「智」、「知」と言うようになりました。
「知」はしる、さとるのように動詞として使われ、「智」はちえ、ちしきのように名詞として使われ
ます。
「奸佞」は心がねじけてへつらうこと。正しくない心で人の歓心をかうことを表します。「奸」は「姦」とも
書きます。
「邪智」はよこしまな考えをいいます。「知」とも書きます。
「奸佞」といい「邪智」といい、心が正しくない意味を持つ二つの熟語を重ねて、ゆがんだ心で人に取り入る様子を強調した四字熟語です。「邪智奸佞」ともいいます。
【奸佞邪智】の四字熟語としては、中国古典では見当たりませんでした。
太宰治の「走れメロス」に【奸佞邪智】が使われていました
・・・・・・・・・ 。 さて、メロスは、ぶるんと両腕を大きく振って、雨中、矢の如く走り出た。
私は、今宵、殺される。殺される為に走るのだ。身代りの友を救う為に走るのだ。王の【奸佞邪智】を打ち破る為に走るのだ。走らなければならぬ。そうして、私は殺される。若い時から名誉を守れ。
さらば、ふるさと。若いメロスは、つらかった。幾度か、立ちどまりそうになった。えい、えいと大声挙げて自身を叱りながら走った。