【兄弟(ケイテイ) 牆(かき)に鬩(せめ)ぐ】と訓読みされまして、兄弟が家の中で互いに争って喧嘩をする、という意味です。
【鬩:ゲキ】は、鬥(部首)+兒(音符号) から作られた形声文字です。
鬥は、「たたかいがまえ」という部首名を持っていまして、戦(戰)う・争(爭)うの意味を含む文字が
所属しています。
もとは鬥部の文字でしたが、門(もんがまえ)の字にされてしまった字があります。
「闘」です。ですから「闘」の正字体は「鬪」です。
【牆:ショウ】は、爿(部首)+嗇(音符号) から作られた形声文字です。
爿は、「ショウへん」という部首名を持っていまして、木を二つに割った左半分の形です。
右半分が「片:かたへん」です。
爿部に所属する文字は、「牀」、「牆」です。
【鬩牆】は、牆(かき)に鬩(せめ)ぐ。同じかきの中(敷地の中、家の中)の者同士が争うことです。
出典は『詩経』小雅(ショウガ)・常棣(ジョウテイ)です。
脊令在原 兄弟急難
脊令(セキレイ)原に在り 兄弟難を急にす
鶺鴒は、今原野にあって雌雄が(艱難を共にして)いる。
(そのように)兄弟は危急の難儀のある時(は互いに助け合うべきである)。
每有良朋 況也永歎
良朋(リョウホウ)有(あ)りと毎(いへど)も、況(ここ)に永(なが)く歎く
良い友達があっても、(危急の場合には、ただ同情する言葉で)長く嘆息するだけだ。
兄弟鬩于牆
兄弟牆(かき)に鬩(せめ)げども、
兄弟は、家の中で互いに争って喧嘩することもあるが、
外禦其務
外(そと) 其(そ)の務(あなど)りを禦(ふせ)ぐ
外部からの侮辱を受けるようなことがあれば、
心を一つにして、その侮辱を防ぐ」ために助け合うものだ
福沢諭吉『学問のすすめ』には【兄弟、相(あい)鬩(せめ)ぐにあらず】となって第十篇にでています。
農となり、商となり、学者となり、官員となり、書を著わし、新聞紙を書き、法律を講じ、芸術を学び、
工業も起こすべし、議院も開くべし、百般の事業行なうべからざるものなし。
しかもこの事業を成し得て、国中の兄弟相鬩ぐにあらず、その智恵の鋒を争うの相手は外国人なり、
この智戦に利あればすなわちわが国の地位を高くすべし。
また十二篇には、【兄弟(ケイテイ) 牆(かき)に鬩(せめ)ぐ】とでています。