根拠のないことを大げさにいうこと、でたらめ、ほら を表わした四字熟語です。
【虚】は、虍(音符号)+丘 から作られた形声文字で、原義は「はか。おか」です。
「むなしい」の意味で使われています。
【誕】は、言+延(音符号)から作られた形声文字で、音符号の「延」は、のばすの意味、言葉を事実よりも
越えてのばすことから、ことばがすぎる、「いつわる」の意味を表わします。
漢和辞典における【誕】の意味は
①いつわり、うそ。②あざむく。③おおきい。④正しくない、不正。⑤ほしいまま。
⑥うまれる となっています。
【誕】の原義はあまり良い意味ではありません。⑥番目にヤット、「生まれる」がでてきました。
これも本来「誕」の字が持っていた意味ではなく、『詩経』大雅の生民(4言×72句)という長い詩の
なかで使われたことから、一般に使われるようになった意味です。
誕(ここ)に厥(そ)の月を彌(を)へ
月満ちて
先づ生まるること達の如し
初産は羊が子を生むように安産でした。
この詩の「誕」に「生まるる」を連ねて、「誕生」という成語にしたものです。以後【誕】に「⑥うまれる」の意味が加わりました。
熟語としまして「誕欺:タンギ/あざむく」、「誕言:タンゲン/おおげさな言葉」
「誕妄:タンモウ・妄誕:モウタン/いつわり、でたらめ」。
【妄】は、亡(音符号)+女 から作られた形声文字で、道理が無い、でたらめの意味を
表わします。女は、心理状態を表わす語に付けられます。
【説】は、言+兌(音符号) から作られた形声文字で、
音:セツのときは①とく、いう。②おしえる。③いのるなどの意味で使われます。
音:エツのときは「よろこぶ」。学びて時に之を習う、亦説(よろこ)ばしからずや。
福沢諭吉『学問のすすめ』十五篇に【虚誕妄説】がでてきます。
かのアジヤ諸州の人民が、虚誕妄説を軽信して巫蠱(フコ)神仏に惑溺し、あるいはいわゆる
聖賢者の言を聞きて一時にこれに和するのみならず、万世の後に至りてなおその言の範囲を脱
すること能わざるものに比すれば、その品行の優劣、心志の勇怯、もとより年を同じゅうして
語るべからざるなり。
【虚誕妄説】を簡単に信じたり、巫女神仏に迷いおぼれたり、聖賢の人の言葉にやたら同調してはいけない。
文明開化に浮足立っていた明治の人への福沢諭吉からの警告です。