冷酷で、恩義や人情をわきまえない者を罵っていう言葉です。
顔は人間であるが、心は獣に等しいの意です。
『史記』に
夷狄の人は、貪りて利を好み、被髮・左衽(サジン)にして、人面獣心なり。
とありますように、古代中国の周囲にいた異民族のことを誇張して述べたものです。
芥川竜之介の『地獄変』に、【人面獣心】がでています。最後の二十章の一部」です。
それからあの良秀が、目前で娘を焼き殺されながら、それでも屏風の画を描きたいと云ふその木石の
やうな心もちが、やはり何かとあげつらはれたやうでございます。
中にはあの男を罵(ののし)つて、画の為には親子の情愛も忘れてしまふ、【人面獣心】の曲者だ
などと申すものもございました。
あの横川(よかわ)の僧都様などは、かう云ふ考へに味方をなすつた御一人で、
「如何に一芸一能に秀でやうとも、人として五常を弁へねば、地獄に堕ちる外はない」などと、
よく仰有つたものでございます。
史上有名な噂話としまして、
小早川秀秋の裏切りによって大谷吉継が自刃に追い込まれた際、
小早川秀秋の陣に向かって
「【人面獣心】なり。三年の間に祟りをなさん」と言って切腹しました。
この祟りによって秀秋は狂乱して死亡に至ったとか。
関ヶ原の戦いでのお話です。