俎の上に載せられた肉のことで、生きるも死ぬも相手の心次第というたとえです。
【俎の鯉】と同義です。
【俎】の「人人」を縦に並べたのは肉片の象形です。音符号の「且」は、肉を載せる台の象形です。
祭りの時肉を載せる台を【俎】といいます。
【肉】をニクと読むのは本来「音読み」です。和語としましては「しし」です。「宍」は【肉】の俗字としてつくられました。日本語では、いま一般に、【肉】を「にく」、「宍」を、「しし」と読むことが多く、「しし」も【肉】の意味です。
『史記』項羽本紀の鴻門の会のところに【俎上之肉】が出ています。
鴻門で劉邦と項羽が会見した時、不穏な雰囲気になってきました。
劉邦は厠(かわや)へ行くと称して席を立ちました。
劉邦の身を案じて寄り添う樊噲(ハンカイ)に
このまま立ち去りたいがまだ挨拶していない、どうしたものだろうと相談しました。
樊噲曰く
樊噲がいいました
大行は細謹を顧みず、大礼は小譲を辞せず。
大きなことをやろうとしている時には、小さなことは気にしない。
いま人まさに刀俎(トウソ)たり、われは魚肉たり。
今われわれは、俎の肉であります。
何ぞ辞せんや。
どうして挨拶などなさる必要がありましょうや。
かくて、そのまま立ち去りましたが、その際、張良にとどまって謝罪させることにしました。