【安(やす)きに居(お)りて危(あやう)きを思う】と訓読みされまして、
普段から万が一のことを思い、常に用心を怠らないようにすることが大切ですという戒めのことばです。
出典は『春秋左氏伝』の襄公十一年(B.C.562年)の出来事が記述されているところです。
春秋時代、晋・宋・斉など十二国の連合軍が、鄭(テイ)へ攻め入ろうとしました。
鄭は、十二国で最大国の晋へ和睦を願い出ました。
晋はこれを受け入れ、他の国も進軍を取りやめました。
鄭は晋へお礼として大量の貢物を贈りました。
晋王は、財物を家臣と山分けしようとしました。
しかし家臣・魏縫(ギホウ)はそれを固辞し、
『晋国が今たいへん順調な時だからこそ、
居安思危 【安(やす)きに居(お)りて危(あやう)きを思う】
思則有備 思えば則ち備え有り、
有備無患 備え有れば患い無し。
常に将来の危険を思い起こすべきであり、警戒心があってこそ準備することができ、
有事に備えて危機を避けることが出来る。』と
直訴しました。
平時における備えの重要性を説いた【居安思危】は、防災や危機管理の心構えとして、よく例えに用いられているようです。特に『備え有れば患い無し』は耳に胼胝(たこ)のことでしょう。